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山梨県甲府市NPO法人にじいろのわ


甲府支社お客さまアドバイザー・支社スタッフ

誰もが活躍できる社会の実現のために、
誰かの「居場所」であり続けたい。

2023年の創業100周年に向け、「THE MUTUAL(ザ・ミューチュアル)-次代の"相互扶助"を考える-」というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいます。「THE MUTUAL」とは共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のことです。

今回ご紹介するのは、山梨県で子ども食堂や地域食堂、フードパントリーなど、食を中心に様々な支援活動を行っているNPO法人“にじいろのわ”。甲府支社の職員が“にじいろのわ”と出会ったのは、あるテレビ局の企画を通じて。人と人が互いに支えあえるネットワークによって、ハンディキャップや年齢の枠を超え誰もが活躍できる社会を実現したいという“にじいろのわ”の理念に共感し、約1年前から様々な活動を通してつながりを深めてきました。そして今年2021年の10月には、“にじいろのわ”のご協力のもと、子どもたちのために秋の花火イベントを開催しました。

“にじいろのわ”の代表である土屋 茂さんに、日頃の活動について改めてお伺いするとともに、今までの“にじいろのわ”と甲府支社の歩みを振り返りながら、これからの「つながり」や「支えあい」について語り合いました。

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子どもたちの笑顔が、
すべての活動の原点であり、原動力。

お客さまアドバイザー(以下、お客さまAD) 本日は、お時間をいただきありがとうございます。まず、“にじいろのわ”を立ち上げたきっかけや想い、経緯をお聞かせください。

土屋さん(以下、土屋) 2011年3月に東日本大震災が発生した時に「自分にできることはないのか、助けになれることはないのか」と、いてもたってもいられない気持ちでしたが、当時は“八百屋カフェ”という新たな事業をスタートしたばかりで、すぐに支援に向かうことができませんでした。
震災から数ヵ月後のある日、福島から避難してきた親子が“八百屋カフェ”を訪ねてくれました。その親子から「福島に残っている子どもたちに、楽しい夏休みを体験させたい。山梨で保養キャンプをやってみたいのですが、手伝ってくれませんか?」と相談を受けたことが、“にじいろのわ”の活動を始めたきっかけです。何もかもが初めての試みでしたが、ようやく、自分にできる被災地支援が見つかったという思いでした。

そうして企画したのが、2012年から2019年まで続いた「じゃんじゃんキャンプ」です。当初は、継続して開催することは考えていませんでした。福島の子どもたちが、水に触れたり、土に触れたり、震災によって失われた自然に触れることで、無邪気に喜ぶ姿に心を打たれ「子どもたちが望む限り、ずっと続けていこう」と決意しました。その後、子どもの貧困や孤食が社会的な問題としてクローズアップされ、2016年2月からひとり親世帯を対象に「子ども食堂」を始めました。ひとり親世帯は、すべての負担が親ひとりの肩にのしかかってきます。月に一度くらいは、誰かに作ってもらったごはんを、お子さんとおしゃべりしながら楽しんでほしい。そんな想いで今も続けています。

社会で孤立しがちなひとり親世帯の親御さんは、「信頼できる」と確信するまで、なかなか胸の内を明かしてくれません。そういった人たちにとって子ども食堂は、同じ想いを分かち合える人たちと交流を持てる場でもあります。何度か子ども食堂でごはんを食べているうちに、ぽつりぽつりと悩みや困りごとを話してくれることがあり、子ども食堂はひとり親世帯の想いを理解し、より適切な支援をしていくための手段にもなっています。
そして、社会に対して疎外感を抱えているひとり親世帯が理解者と出会える、一つの「居場所」になれているのではないかと感じています。

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コロナ禍で支援を必要とする家庭に向けて食料品を配布したフードパントリーでは、甲府支社からエコバッグを寄贈。食料品を入れて親御さんにお渡しいただきました。

改めて感じた「対面」のちから。
困難な時だからこそ、ぬくもりある支援をしていきたい。

お客さまAD コロナ禍では、支援を必要とする方が増えたのではないかと想像しています。

土屋 コロナ禍によって、ひとり親世帯の環境は悪化しています。職場では雇い止めにあったり、シフトを減らされたり…。わたしたちは、約200のひとり親世帯とSNSグループでつながっています。何もかも上手くいかず、思わず子どもに手を上げてしまいそうになったという話も聞きました。子どもたちはもちろんですが、親御さんも追い詰められている状況にあります。

お客さまAD ひとり親世帯の生の声が届いているんですね。困っている方が増えているのに、人との接触は減らさなければならないという状況で、どのような活動をされていましたか?

土屋 ひとり親世帯の親御さんが新型コロナウイルスに感染し入院することになれば、暮らしが崩壊することは明らかです。子ども食堂や飲食を伴うイベントはすぐに中止を決めました。その中で、子ども食堂が開けなくても、違う方法で食料品を提供しひとり親世帯をサポートできないかと考えていたところ、甲府市から「学校給食が中止になり、食材が余っている。なんとかできないか」と相談があり、食料品を無料でお配りする「フードパントリー」を実施しました。

お客さまAD フードパントリーは宅配で行われたのですか?

土屋 窓越しにみなさんの表情を見て元気かどうか確認したい、元気づけたいという思いがあり、ドライブスルー形式で開催しました。学校給食の食材は冷凍品が多く、数トンをその日のうちに配りきらなければならず、週に一度の開催はなかなかハードでしたね。フードパントリーに来てくれた子どもたちが、スタッフが懸命に活動する様子を見て「いつか僕たちも手伝いたい。スタッフTシャツを着たい」と言ってくれました。みんな苦しい時期でしたが、つながりが深まったのではと感じます。

お客さまAD わたしたちフコク生命も、Face to Faceを大切にしています。コロナ禍でお客さまの元へ伺うことを躊躇していたのですが、「対面だからこそ安心できる」と言ってくださるお客さまも多く、顔を合わせてお話する今までのスタイルは間違っていなかったと感じました。みなさんの活動と、共通点が感じられてうれしいです。

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今年の7月に開催された「GoToキャンプ」に、甲府支社の職員も参加させていただきました。「おやさいクレヨン」を使って子どもたちがお絵描きを楽しんでくれました。

「我慢」することが多い子どもたちへ、
全力で楽しめる体験を届けたい。

お客さまAD みなさんとご縁ができたのは、2020年の10月、あるテレビ局の企画を通じてのことでした。土屋さんの熱い想いに共感し、わたしたちにも何かできることはないかと、エコバッグや「おやさいクレヨン」を寄贈させていただきました。

土屋 エコバッグを寄贈いただいたのは、出会ってすぐのこと。その迅速な対応に驚きました。「支えあいや助け合いの精神を大切にしたい」という共通した想いを持つ者同士、すぐに分かりあえる部分があったのだと感じ、うれしく思っていました。いただいたエコバッグに食料品を入れて、フードパントリーに来られた親御さんにお渡ししました。ありがとうございます。

お客さまAD 今年の7月には、甲府支社長と職員で「GoToキャンプ」に伺わせていただきました。わたしたちが寄贈した「おやさいクレヨン」でお絵描きを楽しむ子どもたちの笑顔を見て、「もっとなにかできないか」という気持ちになりました。

土屋 子どもたちの笑顔には、何にも代えがたい魅力がありますよね。フコク生命のみなさんも、すっかり虜になってしまったんですね。

お客さまAD まさにそうですね。「もっとなにかできないか」という想いが形になったのが、10月に開催した「GoTo秋花火」でした。もともとは、みなさんが今年の春に開催した花火イベントにインスパイアを受けて、コロナ禍において「我慢」することが多い子どもたちに全力で楽しんでほしいと想い企画したイベントです。

土屋 「GoTo秋花火」では、開催いただきありがとうございました。春の花火イベントは、去年とある高校生がわたしたちに「卒業の思い出に花火を上げたい」と相談してくれたことが始まりでした。コロナ禍が続き、修学旅行にも行けなかった子どもたち。なんとか実現をサポートしたいと資金集めに協力したのですが、学校の反対で中止となりました。高校生たちの失望は大きかったと思います。
ひとりの大人として、「強い想いは叶うよ」と高校生たちに伝えたくて、春に花火を打ち上げるイベントを開催しました。

そのことを、甲府支社の坂井支社長にお話ししたところ、「春のイベントに行けなかった、ひとり親世帯の子どもたちにも花火を見せてあげたい。コロナ渦でイベントの中止が相次ぎ、苦しい状況が続いている花火業界の力にもなれるのではないか」と言ってくださいました。

お客さまAD 土屋さんには「GoTo秋花火」開催の前に、甲府支社全体で行うWEB朝礼にリモートでご参加いただき、職員に子どもたちへの想いを伝えていただきました。その想いが職員の共感を呼び、「GoTo秋花火」の成功につながったと思います。

土屋 花火を見上げる子どもたちの表情を見れば、間違いなく成功でしたよね。花火師さんから直接聞く花火の歴史や、花火に込められた願い、真下から見上げる花火、おなかに響く音。すべての要素が特別な時間をつくってくれました。大きな歓声を上げて、花火を見上げる子どもたちの姿に涙が出ましたね。

また花火の前に企画してくださったコンサートも、子どもたちはもちろん、親御さんも楽しんでくださり、誰にとっても特別な時間になりました。フードパントリーで親御さんと顔を合わせると、挨拶のように「この間の花火すごかったね」と話してくれます。

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秋の夜空に花火を打ち上げた「GoTo秋花火」。
フコク生命のお客さまや“にじいろのわ“とつながりのあるご家族の方々に、真下から見上げる迫力ある花火を楽しんでいただきました。

「困ったときはお互いさま」の精神で
思いやりがあふれる社会に

お客さまAD 「GoTo秋花火」がみなさんの思い出になれたと知り、とてもうれしく思います。みなさんの活動は「支えあい」や「助け合い」の精神がベースにある、まさにMUTUALな取組みだと感じています。フコク生命も困っている子どもたちや親御さんたちのために、これからも“にじいろのわ”のみなさんと地域支援活動をしていきたいと考えています。今後の予定や、活動する上で困っていることがあれば、お聞かせください。

土屋 今後の活動については、リモートも併用しながら、可能な限り対面で実施したいと考えています。人のあたたかみを感じられる活動をしていきたいですね。また、学生ボランティアと話す中で「貧困の連鎖を断ち切るには教育しかない」と考えるようになり、彼らと共に学びの場をつくろうと計画しています。

わたしたちの課題は、情報発信力。県内には9,600ものひとり親世帯がいますが、現在わたしたちがつながりを持っている家庭の数は、その中の1,000世帯ほどです。新聞やニュースを見る余裕もない親御さんたちに情報を届けるにはどうすればいいか、模索しています。

お客さまAD 難しい課題ですよね。今回の取材が、少しでも多くのひとり親世帯のご家族に、みなさんの活動を知っていただくきっかけになればと思っています。

では、最後の質問です。
フコク生命は2023年11月22日に100周年を迎え「THE MUTUAL〜次代の相互扶助を考える〜」をコンセプトに、フコク生命に関わるすべての人のつながりを深め、支えあい、真の"相互扶助"を体現する組織を目指しています。
これからの時代に求められる“支えあい、助け合い”のかたち、人とのつながりかたのあるべき姿とは?心豊かに暮らしていくために、人と人との関係はどうあるべきだと思われますか?

土屋 この先の「支えあい、助け合い」のヒントになるのは、戦後すぐの日本社会ではないかと感じています。ご近所さんとの近しい関係性や、地域で子育てをしていた部分など、見習う面が多い。わたしたちは、SNSグループの中で「昭和のご近所付き合い」を再現しようとしています。「困ったときはお互いさま」と言い合える関係性が、人と人のつながりをつくるために大切になるはずです。支援する側も、支援される側も、今この時代を共に生きる仲間ですから。

わたしたちは「思いやりやまなし」というコンセプトを掲げて活動しています。人の想いや痛みを理解することは難しいですが、相手の立場を想像し、「理解したい」という気持ちで寄り添うことが、あたたかな社会をつくるために重要だと思います。

もうひとつ大切なことは、見返りを求めないという姿勢。わたしたちが、子どもたちに憧れてもらえるような大人になり、思いやりの精神をつないでいけたらと思います。
わたしたちはこれからも、支えあい、助け合い、誰かの「居場所」であり続けたいと思っています。

甲府支社

編集後記

甲府支社 お客さまアドバイザー

「次代の相互扶助」を体現するヒントが、昭和のご近所付き合いにあるというお話に共感しました。私たちもこれまで以上に地域に密着し、Face to Faceの活動をしていかなければと思いを新たにしました。そして、「地域で子育てをする」という意識が高まれば、ひとり親世帯の親御さんの負担が軽くなり、笑顔が増えるのではないかと思います。
また、土屋さんの強い思いに感動しました。コロナ禍においても、あたたかみのあるコミュニケーションを諦めない。その想いが、スタッフのみなさんやひとり親世帯にも伝わり、誰にとってもあたたかみの感じる「居場所」になっているのだと思います。わたしたちも、困難な時こそ、あたたかみのある対面でのサポートを続けたいと思います。

※マスクを着用していない写真は、撮影時のみ外して撮影しています。

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