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岐阜県大垣市有限会社大橋量器


岐阜支社お客さまアドバイザー

人と人をつなぐ、大垣の枡。
ものづくりを通して、地域に元気を届けたい。

2023年の創業100周年に向け、「THE MUTUAL(ザ・ミューチュアル)-次代の"相互扶助"を考える-」というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいます。「THE MUTUAL」とは共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のことです。

岐阜支社では、「地域の名産品をより多くの方に知っていただき、喜んでいただきたい」という想いから、地元の名産品を職員やお客さまへご紹介する取組みを行っています。
そんな岐阜支社の職員が訪れたのは、岐阜県大垣市。実は、大垣市は日本一の枡の生産地で、全国に流通している枡の8割が、大垣で作られています。
1300年以上の歴史を持つ枡。しかし、時代の変化とともに枡の需要は減少。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、大垣の枡は厳しい状況に追い込まれています。

こうした状況下で、「この先も末永く枡を愛してほしい」と、枡の新たな可能性を模索し、枡を通して地域と人のつながりを生み出しているのが、有限会社大橋量器です。同社の取組みに共感した岐阜支社では、地域の人たちに、同社が手がける「Math Salt(マスソルト)」(ヒノキの香りでほっとできるバスソルト)をお配りしました。
代表取締役の大橋博行さんに、枡への想いや枡を通じた活動などについて、お話を伺いました。

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1300年以上愛されてきた、
枡の魅力を伝えたい。

お客さまアドバイザー(以下、お客さまAD) まず、大橋さんが会社を引き継がれた当時の状況や心境をお聞かせください。

大橋さん(以下、大橋) 実は、就職活動中は家業を継ぐことは考えておらず、大学卒業後にIT企業へ就職しました。数年後、実家で結婚を報告した際に、父から会社を継ぐように言われました。「すぐには継げない」と返事をしたものの、4人兄弟の長男として、幼い頃から親はもちろん、親戚や近所の人からも「大きくなったら枡屋をやるんだよ」と言われてきたことを思い出しました。生まれ育った大垣が好きでしたし、地場産業の担い手である大橋量器を守り育てていくべきなのではと考え、家業を継ぐ決心をしました。

お客さまAD 大橋さんが思う枡の魅力はどのようなところでしょうか?

大橋 ひとつは、素材であるヒノキの魅力です。ヒノキは、世界最古の木造建築である法隆寺にも使われるなど、日本では古来より重宝されてきました。森林浴をしているかのような独特の香りとぬくもりが感じられます。また、枡は建築などに使われた木材の端材を活かしてつくられるので、持続可能な社会の実現にもつながります。

もうひとつの魅力は、これ以上でもこれ以下でもない、シンプルな佇まい。1300年以上の歴史を持つ道具として、いつ見ても素晴らしい佇まいだなと思います。

お客さまAD おっしゃる通り、枡の佇まいにはぬくもりと、どこか日本らしさを感じます。

大橋 そうですね。海外の方は、枡に日本ならではの粋な雰囲気や、神々しい印象を抱いてくださります。また、日本の方は「ます」の響きから、「増す」という言葉を連想し、「福が増す」「愛が増す」といった意味を込めて、お祝いの場で枡を使ってくださいます。特別な時に彩りを添えられる仕事だと思うと、やりがいを感じます。

お客さまAD 枡は縁起物でもあるのですね。「人と人のつながり」の中に、枡が存在しているように感じます。

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枡を通して生まれた、
地域や人とのつながり。

お客さまAD 大橋さんは、枡の魅力を広く伝えるため、業界を超えたコラボレーションにより新たな枡を開発されたり、大垣「ます」まつりを毎年開催されたりと、さまざまな活動に取り組まれています。その活動のきっかけや想いについて教えてください。

大橋 やはり、多くの方に枡の魅力を知ってもらいたいという想いが、活動の原点になっています。特に、大垣に住む皆さんにこそ「大垣には枡がある」と伝えたいです。
大垣に住むみなさんは「大垣には何もない」とよく話されます。わたしは、大垣の魅力のひとつが「多様なものづくり」にあると思っているので、その言葉を聞くたびに寂しい気持ちになります。でも、わたしたち作り手が、枡は大垣の名産品だと伝えてこなかったのですから、「何もない」と思うのは当然です。大垣の人にとって大橋量器は、シャッターの中から機械音とヒノキの香りが漂ってくる謎の場所だったのかもしれません(苦笑)。

お客さまAD 大垣の人とのつながりが生まれ始めたのは、枡専門ショップ「枡工房ますや」がオープンしてからでしょうか?

大橋 そうですね。2005年に開いた「枡工房ますや」に来店されたお客さまが、大垣は枡の生産量日本一だと知り「市民としてプチ自慢ができた」と喜ぶ姿を見ました。そのとき初めて、大垣の人とのつながりを感じることができました。枡が大垣の名産品だということが、まだ知られていないことを実感し、大垣の人とのつながりを強めたいと思いました。

お客さまAD たしかに、枡が名産品だということは、大垣の人にもあまり知られていないのかもしれません。地域の魅力のひとつとして、もっと知ってもらいたいですよね。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止された、大垣「ます」まつりの再開も、たくさんの方が楽しみにされていると思います。

大橋 大垣「ます」まつりも、枡が大垣の名産品であることを伝えたいという想いから、地元の枡メーカーさんに声をかけてスタートしました。枡メーカーさんはライバルでもありますが、枡の発展に真剣に取り組む仲間でもあります。そんな仲間とともに、さまざまな活動をしてきました。大垣市や観光協会からお声がけをいただくことも多いです。「枡は大垣自慢の名産品だと伝えたい」という共通した想いを持っているので、良好な関係が築けています。

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大垣「ます」まつりで、ます積み競技大会を楽しむ子どもたち。

業界を超えた人との出会いで広がる、
枡の新たな可能性。

お客さまAD 大橋さんが新たに開発されたユニークな商品について、ぜひ教えてください。

大橋 自然蒸発を利用したエコ加湿器「MAST(マスト)」や、どんな空間にも似合うインテリアライト「灯します」、5人のデザイナーさんによるポップな「カラー枡」、ヒノキの香りでほっとできるバスソルト「Math Salt(マスソルト)」、枡の形をしたピアスやイヤリングなど、ジャンルを問わず、さまざまな商品をつくっています。

新商品の開発に取り組むようになったのは、計量器や酒器といった従来の用途で、枡を使う機会が減ったという現実を受け止めてからです。
このままでは、枡が暮らしの中からなくなってしまうという危機感から「枡には何ができるだろう」と考え、インテリアや雑貨など、新たな活用方法を模索しました。

お客さまAD  暮らしの中での、枡の新たな役割を探されているんですね。新商品のアイデアは、どのように生み出されていますか?

大橋 会社を継いだ当初は、工場の外を歩いているだけでも、いろいろな発想が湧いてきました。わたしは、世界で一番枡を愛していると自負しています(笑)。普段、どこにいても枡のことが頭から離れず、「これと枡を組み合わせたらどうなるだろう」、「これを枡でつくることはできないか」と、自然と考えてしまいます。

最近は、「多くの方へ枡を届け、親しみ、楽しんでもらいたい」という想いを共有できるデザイナーさんや異業種の方と連携して新商品を開発することが多いので、自分だけの発想ではなく、人とのつながりからアイデアが生まれています。

お客さまAD 人との出会いによって、新しい商品が生まれているんですね。
初めて会う人とコミュニケーションをとる際に、心がけていることはありますか?

大橋 「えい!」と飛び込むことが大切だと思います。IT企業で働いていた頃、営業先に伺う直前に、何を話すかシミュレーションをしていたら、上司に「そんなことはせず、トン・トン・トンと行け」とアドバイスされたことがあります。準備でもたもたするようなら、とにかく動く!そのスピード感は今も大切にしていますね。

お客さまAD わたしたちも初対面の方とお話しすることが多いので、見習いたいです。

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大橋量器が新たに開発されたユニークな商品。
写真は、エコ加湿器「MAST」(左上)、インテリアライト「灯します」(右上)、「カラー枡」(左下)、 バスソルト「Math Salt」(右下)。

周りに関心を持つことで、
自然と人とのつながりは強くなる。

お客さまAD 今回、岐阜支社では「地域の名産品をより多くの方に知っていただき、喜んでいただきたい」という想いから、地域の人たちに、御社の「Math Salt(マスソルト)」をお配りさせていただきました。わたしたちも、少しでも地域活性化の力になれればと思っています。

大橋 小さなものづくりの会社は、生き残りをかけて日々チャレンジを続けています。そういった会社に注目していただける機会を増やしてくださるのは、とてもありがたいです。今回は、わたしたちの活動を取り上げていただきましたが、地域で頑張る企業や人のご紹介を続けていただけたらうれしいです。

お客さまAD ありがとうございます。これからもさまざまなかたちで、地域で頑張るみなさんを、ご支援していきたいと思います。

では、最後の質問です。
これからの時代、人と人のつながりはどうあるべきだと思われますか?また、人とのつながりにおいて、大橋さんが大切にしていきたいことはありますか。

大橋 周りの人や物事に関心を持つことで、人と深い話ができ、つながりは自然と強くなると思います。関心を持つには、人や物事に出会える「場」をつくることが必要だと感じ、新たな枡に出会えるカフェ「masu cafe」を2018年にオープンしました。
意外と忘れがちなのは、住んでいる地域に関心を持つことです。地域の魅力に目を向けることで、地域の人同士の自然な会話につながる、共通の話題が見つかるはずです。

お客さまAD 枡を中心に、大垣に住む人の交流が増えたら素敵ですね。今回お話を伺って、大橋さんの枡や大垣への熱い想いを感じました。これから、枡を通して叶えたいことはありますか?

大橋 人と人のつながりの間に枡がある、そんな光景を増やし、大垣の街を盛り上げていけたらいいなと思っています。枡は、人が集まる場や、新しいことを始める場、お祝いの席など、さまざまな場面に彩りを添えてくれます。これからも、枡や大垣の魅力をたくさんの人に知ってもらえるよう、新しい取組みにチャレンジしていきたいと思います。

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岐阜支社では「Math Salt(マスソルト)」を購入させていただきました。
大垣自慢の名産品をより多くの方に知っていただけるよう、地域の人たちに広めていきたいと思います。

甲府支社

編集後記

岐阜支社 お客さまアドバイザー

枡の魅力を伝えようと常に挑戦し、新たなアイデアを形にされている大橋さんの姿に感銘を受けました。この先も、たくさんの人と人のつながりから新たな枡を生み、「ものづくりの街 大垣」の魅力を伝えつづけてほしいです。わたしたちも、地域を知り、地域を愛し、地域や人とのつながりをさらに深めていきたいです。
新たな出会いにも臆せず飛び込んでいく大橋さんの姿勢と行動力をお手本に、今後もお客さま、そして地域の人たちとともに歩んでいきたいと思います。

※マスクを着用していない写真は、撮影時のみ外して撮影しています。

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