フコク生命は2003年の80周年事業を皮切りに生命保険の原点に改めて立ち戻る、顧客本位の企業変革活動をスタート。2008年には「お客さま基点」を経営理念体系の中心となる価値観に位置づける。「お客さま基点」とは、フコク生命の役職員一人ひとりが「もし自分がお客さまだったら」を常に想像しながら、お客さまが心から安心できるであろう、フコク生命ならではのサービスや経験を創り出し、提供していくことだ。
なぜフコク生命は業界に先駆け顧客本位の業務運営に取組み、「お客さま基点」をあらゆる企業活動の原点である価値観としたのか。「お客さま基点」に込められた想いや現状について、「お客さま基点」という価値観の浸透と実践に尽力してきた者たちに、100周年プロジェクト社史外伝チーム(※1)のメンバーが聞いた。

※1 100周年プロジェクト社史外伝チーム
2023年に創業100周年を迎える当社は、「THE MUTUAL」(ザ・ミューチュアル)というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいる。「THE MUTUAL」とは、共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のこと。社史外伝チームは、年表では読み取れない役職員の心情や熱意を深掘りし、その想いを語り継ぐべく記録として遺す。

フコク生命に加入してよかったと、
お客さまに思っていただけるように

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金融庁が、2017年3月に、「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表したことを受けて、同年6月にフコク生命グループおよびフコク生命の『「お客さま基点」の業務運営方針』を策定し、ホームページで公表。フコク生命は創業以来、相互会社として「ご契約者の利益擁護」を経営理念に掲げ企業活動を行ってきた。その根底にある「お客さま基点」という価値観は「真にお客さまの立場に立って行動する」という点において、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の定義に即している。「お客さま基点」による当社の取組みはフィデューシャリー・デューティーの実践に他ならない。
富国生命保険相互会社第9代社長米山好映(よねやま よしてる)は、「お客さま基点」を価値観としたのは当然のことだという。

米山
フコク生命は、「ご契約者本位」という想いのもと相互会社として創業された会社ですから、「お客さま基点」は特別なことではありません。しかし、「お客さま基点」が本当に実践できているかは、また別の問題です。まだまだ実践できていないというのが、現実かもしれない。だからこそ、創業の想いに立ち返り、敢えて「お客さま基点」を企業活動の原点である価値観にしたのです。
「お客さま基点」とは、お客さまからの視点で語られるべきものです。フコク生命に加入してよかったと、お客さまに思っていただける。それこそが「お客さま基点」の意図するところで、全役職員で目指すものです。
そのためには、お客さまアドバイザー、お客さまサービス担当、あるいはコールセンターのオペレーターといった、お客さまと接している職員だけではなく、間接部門やバックオフィスなど、すべての職員が「お客さま基点」でなければならない。こうしたことを「車座ミーティング」(※2)などで繰り返し話してきました。
「お客さま基点」が本当の意味で実践され、すべてのお客さまにご満足いただくこと。そのために、個人としてはもちろんのこと会社全体として「お客さま基点」を実践する。これが「お客さま基点」を標榜している会社のあるべき姿であり、当たり前の話だと思っています。

※2 車座ミーティング
社長と職員とが膝を突き合わせて双方向で対話をする「場」として2011年より実施。トップメッセージとして会社の目指していることや方向性、お客さま基点について直に伝えると同時に、職員からの率直な質問や意見を聞いて、その場で回答。12年間(2011~2022年)で300回実施、2,243名の職員が参加。

暗黙知だったことが、
的確な言葉で可視化された

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「お客さま基点」は、受け取り方によっては綺麗事と捉えられることもある。「お客さま基点」が価値観に位置づけられた当時、池袋支社保谷営業所長として営業現場で指揮をとっていた山形支社長の関口淳一(せきぐち じゅんいち)は、当初「お客さま基点」は理想論に過ぎないのではないかと思ったという。

関口
2008年当時、私は保谷営業所の所長として赴任した1年目。営業所をマネジメントする立場として「お客さま基点」という言葉を素直に受け入れられなかったと記憶しています。まずは目の前の営業実績をあげることが優先だと。「お客さま基点」は、遠回りな仕事のやり方ではないか。最初は、そういう印象を持ったというのが正直なところです。
しかし、いま振り返ると、多くのお客さまを担当するお客さまアドバイザーほど「もし自分がお客さまだったら」という考えのもと行動していました。「お客さま基点」が価値観に位置づけられたことで、それまで暗黙知として何となく共有されていたことが、的確な言葉で可視化されたと思います。
現在に至るまで「お客さま基点」を掲げ続けていることで、考え方や行動基準としてかなり浸透してきたと実感しています。新人のお客さまアドバイザーも入社当初から、こうした意識を持つようになりました。ただ、お客さまにご満足いただくためには、現状に満足することなく、より高いレベルを目指していくことが必要だと思っています。
私たちが目指すべき「お客さま基点」を一言でいうと、お客さまへの思いやりに尽きます。それは、お客さまだけに限らず、誰に対しても優しさと気遣いを持てることです。人への思いやりこそが、これからの時代に求められる「お客さま基点」なのではないかと確信しています。

“For Me”ではなく
“For You”を考えること

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フコク生命は「お客さま基点を実践できる人づくり」を目指し、2011年3月に人材開発本部を立ち上げた。当時、人材開発本部部長として人材育成に携わった執行役員業務部長の近藤健(こんどう たけし)に「お客さま基点」への想いを聞いた。

近藤
支社長や営業所長を長年務めてきた中で、「お客さま基点」とは「お客さまのために、あなたが成長することだ」とお客さまアドバイザーに伝えてきました。目の前にいるお客さまが、どれだけあなたに期待しているかということ。そして、あなたの成長はお客さまのおかげだということ。ですから、お客さま一人ひとりとの出会いを本当に大切にしてほしいと伝えてきました。
人はどうしても“For Me”の視点になりがちです。しかし「お客さま基点」で大切なのは、“For You”で考えること。「お客さま基点」とは「もし自分がお客さまだったら」を常に想像し、お客さまが心から安心できるサービスや経験を提供することですから、相手の立場に立ってはじめて実践できるものです。そのことが、社内に本当に浸透しているかというと、残念ながらまだ道半ばではないかと思っています。
「お客さま基点」は、フコク生命のあるべき姿を示す目印であり、これからも掲げ続けていくものです。「お客さま基点」は、本当に心の底から理解しないと実践できません。ですから、時には「お客さま基点」への想いやそうした行動を職員同士で熱く語り合う、そのようなことも続けていかなければいけないと強く思います。

お客さまへのご提案こそが、
一番の「お客さま基点」

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2011年入社の新宿支社新宿第三営業所長 善野里和(ぜんの さとわ)にとって「お客さま基点」は、日常におけるありふれた言葉。お客さまアドバイザーとして実績を積み、キャリアアップしていく中で、「お客さま基点」は当たり前のことだという。

善野
フコク生命が「お客さま基点」の会社であることは、職員にはもちろんですが、お客さまにも浸透してきていると実感しています。それは、フコク生命が「ご契約者本位」という想いのもと創業し、相互会社であり続けていることが大きいと思います。こうした相互会社としてのあり方を「THE MUTUAL」(ザ・ミューチュアル)という言葉として表現したことも素晴らしいですね。創業以来、相互会社を貫く唯一の会社であることや、その想いをお伝えすると、共感し感動してくださるお客さまもいらっしゃいます。
コロナ禍においては、お客さまの命を守ることを最優先し、いち早くFace to Faceでの営業活動を自粛しました。また、「しっかりとお客さまに寄り添ってまいります」と題した社長メッセージを早々にホームページに出したこともフコク生命らしいと思います。

コロナ禍では販売中の医療保険において、新型コロナウイルス感染症などに対する入院見舞給付金が従来の2倍となる「感染症サポートプラス」の取扱いを行った。支払い対象の入院を期間限定(2020年12月28日から2022年1月31日まで)にすることで、保険料を変えることなく既存のお客さまに対しても保障を拡大した。これも「お客さま基点」の実践に他ならない。
今後、お客さまとの関わり方も変わるかもしれない。しかし、「お客さま基点」という価値観は変わらないという。

善野
コロナ禍においても、そしてこれからも、私たちお客さまアドバイザーにとっての「お客さま基点」は変わりません。私たちができる一番の「お客さま基点」とは、お客さまへのご提案です。なぜなら、フコク生命には本当に良い商品があり、良い会社だと自信を持っていますので、一人でも多くの人にフコク生命のことをもっと知ってほしいからです。お客さまとの出会いを大切にし、ずっとお客さまに寄り添っていきたいです。

「ご契約者本位」という想いのもと、相互会社として創業されたフコク生命。その想いは「お客さま基点」に引き継がれている。
2008年から現在に至るまで、価値観として掲げる「お客さま基点」。その想いや考え方は浸透した。しかし、すべてのお客さまにご満足いただくためには、現状に満足することなく、役職員一人ひとりが「もし自分がお客さまだったら」を常に想像し、お客さま一人ひとりにとっての「お客さま基点」を模索し実践し続けることが必要だ。
「フコク生命に出会えてよかった」とお客さまに心から思っていただけるように、「お客さま基点」を胸に歩んでいく。これが、次の100年に創業の想いを受け継いでいく、私たちの使命だ。