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東京都グリーンリボン ランニング フェスティバル


新宿支社

「いのち」と「希望」をつなぐ移植医療。
そのつながりを広めていきたい。

2023年の創業100周年に向け、「THE MUTUAL(ザ・ミューチュアル)-次代の"相互扶助"を考える-」というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいます。「THE MUTUAL」とは共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のことです。

フコク生命が特別協賛する「フコク生命 2022 グリーンリボン ランニング フェスティバル」が2022年10月10日に開催されました。「グリーンリボン ランニング フェスティバル」は移植医療のシンボルである「グリーンリボン」を冠し、臓器移植を受けた方をはじめ、障がいのある方とない方が共に参加し、走る喜びを分かち合うランニングイベントです。

今回、新宿支社は「グリーンリボン ランニング フェスティバル」にランナーとして参加。ランニングイベントで出会った「グリーンリボン ランニング フェスティバル」を主催する日本臓器移植ネットワーク広報啓発事業部の松田尚明さん、東京新聞事業局の安達恭子さん、そして実際に臓器移植を受けられた河合容子さんの3名に「移植医療」について伺いました。

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2022年10月10日に開催された「フコク生命 2022 グリーンリボン ランニング フェスティバル」。

移植医療がつなぐのは、
「いのち」と「希望」。

お客さまアドバイザー(以下、AD) グリーンリボンにはどのような想いが込められているのでしょうか?また、グリーンリボンキャンペーンの取組みの目的や、具体的な活動についてお聞かせください。

松田さん(以下、松田) グリーンリボンは移植医療のシンボルです。グリーンは成長と新しい「いのち」を、リボンは臓器提供者(ドナー)と移植が必要な患者さん(レシピエント)との「いのち」のつながりを表しています。そして、グリーンリボンキャンペーンは、移植医療を通してドナーとレシピエントが結ばれ、よりたくさんの「いのち」が救われる、そんな社会の実現に向けた移植医療への理解促進、普及及び啓発を目的とした活動です。移植医療について考えたり、調べたり、話したりするきっかけになればと思い、様々な活動を行っています。とにかく移植医療に向き合う機会をつくることが大切だと考えています。「グリーンリボン ランニング フェスティバル」もその活動の一環です。

AD 河合さんは心臓移植を受けられたことで、どのような変化がありましたか?

河合さん(以下、河合) 心臓移植を受けて変化したことの一つは、ひとりで行動できる自由を得られたということです。私は拡張型心筋症を発症し、心臓移植を受けるまで5年ほど補助人工心臓(VAD)をつけていました。VADは人工心臓の一種で、働きが低下してしまった心臓のポンプ機能を助けるものです。心臓移植のドナーが見つかるまでのVAD をつけた生活は、常に介助者と共に過ごすことが義務づけられていました。日々の生活が守られてはいるのですが、やはり24時間ずっと誰かと一緒にいるというのは大変なことでした。移植後にひとりで行動できるようになれた時は、本当に嬉しかったですね。
もう一つは、病気を理由にできなかったこと、諦めていたこと、逃げてきたことに向き合えるようになれたことも大きな変化です。闘病生活を送る中で日記をつけていたのですが、その最初のページに、「元気になったら人のために働きたい」と「希望」を記していました。ドナーをはじめ本当にたくさんの人に支えられてきたので、今度はわたしが誰かの支えになりたいとずっと願っていました。特に、困っているご家庭、大変な思いをしている子どもたちに向けて何かをしたいという思いがあり、地元の千葉県で子ども食堂を開催することができました。
心臓移植の手術が終わってからまだ数年しかたっていないのですが、移植によって新たな人生が始まり、病気によって隔離されたと感じていた社会とのつながりを持つことをできたので、ドナーと支えてくれたみなさんには本当に感謝しています。

AD 河合さんにとってドナーはどういう存在ですか?

河合 ドナーの存在なくして、今のわたしは存在しません。わたしの中にもうひとりの人がいるように感じています。だから、ドナーからいただいた臓器は相棒だと思って、ご機嫌を伺うことは忘れないようにしています(笑)。

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グリーンリボン ランニング フェスティバルにて移植者代表として選手宣誓をされた河合容子さん。

たすきをつなぐことで、
移植医療の大切さを感じてほしい。

AD 「グリーンリボン ランニング フェスティバル」に込められた想いをお聞かせください。

安達さん(以下、安達) 東京新聞では1996年から現在まで、障がいのある方とない方が共に参加し、走る喜びを分かち合うイベントを開催して参りました。「グリーンリボン ランニング フェスティバル」は、グリーンリボンと移植医療のことをより多くの方に知っていただきたいという思いで2006年にスタートし、今年で15回目の開催となります。
「グリーンリボン ランニング フェスティバル」の参加者に移植医療のことをどのように伝えようかと考えていた時に、移植医療は「いのちのリレー」と呼ばれていることを知り、チームでたすきをつなぐリレー形式のランニングイベントにしたいと思いました。そして競技前には、ドナーへの感謝の気持ちを込めて風船を飛ばすバルーンセレモニーを行うことにしました。ランニングイベントを通して、移植医療が「いのちのリレー」であることを体感していただき、移植医療への正しい理解を広めていきたいと考えています。

AD 今年で15回目の開催とのことですが、「グリーンリボン ランニング フェスティバル」では、どのように移植医療の啓蒙活動をされていますか?

安達 毎回、ランナーの皆さんに移植医療のパンフレットや臓器提供意思表示カードを配布しています。この大会に参加したことをきっかけに、臓器提供意思表示カードで臓器提供の意思表示をしましょうと伝え続けています。

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左から、名木営業次長(新宿支社)、村岡お客さまアドバイザー(新宿支社)、安達恭子さん(東京新聞事業局)、松田尚明さん(日本臓器移植ネットワーク広報啓発事業部)

移植医療への理解を広め、
一人でも多くの方が意思表示する社会に。

AD 移植医療の現状や課題をお聞かせください。

松田 現在日本で臓器移植を希望している人は、1万5000人に上ります。一方で、臓器移植を受けられる人は1年間に400人程度と、希望者の2~3%に過ぎません。つまり、臓器移植を必要とされる方に対して、臓器提供される方が少ないということです。
日本の人口100万人当たりの臓器提供者数は0.62人です。「国際臓器寄贈及び移植登録(IRODaT)」で2021年に公開されている数値を基に世界の国々と比較すると、アメリカの1/67、韓国の1/14に過ぎず、他国と比較して臓器提供者の数が非常に少ないといえます。
また、2021年度に内閣府が行った「移植医療に関する世論調査」では、「仮に、自分が脳死と判定された場合、または自分の心臓が停止し死亡と判断された場合に、臓器提供をしたいと思うか」という問いに対して、「提供したい」と答えた人の割合が4割程度いるのに対して、実際に意思表示している人の割合が1割程度という結果が出ています。
臓器移植法(※)が施行され 25 年になりますが、もっと多くの方に臓器移植について知っていただくことが必要ですし、臓器提供の意思表示をすることができる機会や場づくりを進めていかなければいけないと思っています。

河合 わたしが感じている課題も同様です。臓器提供の意思表示をすることができる機会や場が少ないということです。病気になる前から、臓器提供意思表示カードの存在を知っていましたし、コンビニにも臓器提供意思表示カードが置いてあるので持ち帰ったこともありました。ただ、臓器移植のイメージがありませんでしたし、意思表示するきっかけや決め手もなく、ずっと家に置きっぱなしにしてありました。そうした経験から、もしかしたら臓器移植の当事者の声を伝えることが、意思表示のきっかけや決め手になるのではと考え、高校、大学、看護学校などで講座を行っています。移植医療の現実を知ってもらい、「いのち」について一緒に考える機会をつくっています。色々と課題はありますが、まずは移植医療について考える機会をつくることが大切だと考えています。

AD 移植医療の課題解決には、より多くの人に移植医療のことを知ってもらうこと、臓器提供の意思表示をするための機会づくりが大切だということがわかりました。わたしたちも移植医療の啓発に努めていきたいと思います。

※臓器移植法
1997年制定。臓器移植の基本的理念を定め、死亡者からの臓器摘出や、臓器売買の禁止などを規定した法律。

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フコク生命職員もランナーとして参加しました。

「いのち」への想いが、
助けあう社会をつくる。

AD では、最後の質問です。移植医療は、社会の人々の善意による臓器の提供により成り立つ公共性の高い医療行為だと思います。これからの時代、移植医療への理解が広がり、多くの人がいきいきと暮らしていく社会を実現するために大切にすべきことをお聞かせください。

松田 先ほども臓器提供の意思表示をすることの大切さをお伝えしましたが、わたしたちがどう生きたいか、あるいはどう亡くなりたいかということを自らが考え、周りの人と話し、一人ひとりの「いのち」への想いが尊重される社会になればと思っています。「いのち」ということを少し広い意味で捉えると、終末期医療や人生会議、そして生命保険や医療保険などもこれにあたると思います。
一人ひとりが「いのち」について考えることで、「いのち」をもっと大切にする社会になるのではないでしょうか。わたしたちは移植医療の啓発を通じて、「いのち」に向き合う機会を提供していきたいと考えています。

安達 ひとりの人間の生とひとりの人間の死がつながることで「いのち」がリレーされる移植医療は、まさに人と人の助けあいだと思います。実は、わたし自身も家族が交通事故に遭い、母が臓器提供をするかしないかを問われたという経験がありました。今でも突然のことに慌てふためいていた母の姿が印象に残っています。自分には関係ないということではなく、こうしたことはいつ誰に訪れるか分かりません。普段から自分の「いのち」を意識すること、そして、自分の意思を周りの人にしっかりと伝えておくことが大切なのではないでしょうか。一人ひとりが「いのち」に向き合うことで、助けあう社会につながっていくのではないでしょうか。

河合 移植医療はドナーとそのご家族の善意による臓器の提供がなければ成り立たない医療です。わたし自身もこの身を持って、その想いを実感しています。わたしたちレシピエントができることは、まず感謝を伝えること。ドナーのご家族にサンクスレターを贈り、ドナーの「いのち」が本当に誰かの助けになっていることを伝えることは大切だと思います。感謝の気持ちが循環すれば、「移植医療は必要なことだ、いのちがつながることは素晴らしいことだ」という考えが広がり、より多くの人が移植医療を受けられる社会になるのではと思います。

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編集後記

新宿支社

フコク生命は移植医療特約のある保険商品を取り扱っていますので、移植医療の実情をお伺いできてとても勉強になりましたし、ドナーとレシピエントのつながりには感銘を受けました。移植医療から生まれるつながりを「いのち」のリレーと表現されていましたが、これは生命保険そのものであると感じました。生命保険はお客さまとの一生涯にわたる、さらには世代を超える約束であり、終わりのない仕事だからです。
わたしたちは、「THE MUTUAL」というコンセプトで100周年プロジェクトに取り組んでいます。「THE MUTUAL」とは共感・つながり・支えあいのこと。移植医療は、まさに「THE MUTUAL」を一つの形にしたものだと思いました。
創業以来、相互会社形態を貫いている日本で唯一の会社として相互扶助の精神のもと、お客さまにしっかりと寄り添っていく。その想いを新たにしました。

※マスクを着用していない写真は、撮影時のみ外して撮影しています。

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