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雲南市公益財団法人うんなんコミュニティ財団


松江支社

ちいさな“おせっかい”が、
人と人をつなぐ。

2023年11月22日の創業100周年に向け、「THE MUTUAL(ザ・ミューチュアル)-次代の"相互扶助"を考える-」というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいます。「THE MUTUAL」とは共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のことです。

今回、松江支社の職員が訪れたのは、島根県雲南市木次町にある三日市ラボ。雲南市は、2004年に6町村が合併した人口約3万5千人の市です。高齢化率が全国平均の25年先を進む雲南市では、「課題解決先進地」を目指し様々な活動を行っています。その活動の一つとして、かつて鍛冶屋だった物件を市民の手によってリノベーションし誕生したのが三日市ラボです。現在はコワーキングスペース&シェアオフィスとして、多くの方に利用されています。

三日市ラボを運営する公益財団法人うんなんコミュニティ財団・理事の石原尚実さんと事務局の平井千夏さんに、三日市ラボの歩みや、雲南市における人と人のつながりについて伺いました。

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公益財団法人うんなんコミュニティ財団事務局の平井千夏さん(石原尚実さんはリモートで参加いただきました)

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コワーキングスペースを超えた、
人と地域がつながる交流の場所へ。

フコク生命職員(以下、職員) 三日市ラボは、人づくりによる地域の持続性確保、そして、今ある資源を活かす空き家有効活用の活動から誕生した場だとお聞きしました。

石原尚実さん(以下、石原) 三日市ラボが誕生したのは2015年の4月です。人口減少、少子高齢化等に向き合う雲南市は10年以上前から、「チャレンジの連鎖による持続可能なまちづくり」を目指し課題解決型の人材育成や住民自治を実施しています。子どもから高齢者までみんながチャレンジできる町づくりを謳っており、その活動の中から生まれたのが三日市ラボです。構想からリノベーションまで約1年半かけ、かつて鍛冶屋であった空き家を市民の手によって三日市ラボとして生まれ変わらせました。1Fがコワーキングスペース、2Fがシェアオフィスとなっています。オープン当初は雲南市内で活動する法人が運営していましたが、私たちうんなんコミュニティ財団が引き継ぎました。うんなんコミュニティ財団は、地域の将来を左右するような大きな課題から日常的な小さな課題まで、市民同士で支え合いながら、市民の手で解決していける未来を目指すという理念のもと2020年4月に設立されました。

平井千夏さん(以下、平井) 三日市ラボをコワーキングスペースとしたのは、全国各地から雲南市に仕事に来られる方がいる中で、「取引先への訪問を終えた後に仕事ができるスペースがあると良いね」という声があがっていたというのが理由のひとつです。

職員 今では、子どもから大人まで交流できる場を目指されているということですが、それはどのような想いからでしょうか?

平井 三日市ラボのオープン当初は、コワーキングスペース、シェアオフィス、お試し移住の体験という3つの活動が軸となっていました。出張などで大きな荷物を持って出入りされる方を見て、「“コワーキングスペース”とはどんな場所なのですか」と地域の方から質問されることもあったほどです。
一番身近な雲南市のみなさんに開かれた場でもあるべきと感じ、地域とのつながりを深めたいと思ったのが、子どもから大人まで交流できる場を目指したきっかけです。コロナ禍以前には子どもから大人までカフェのような感じで気軽に立ち寄ってもらえる様々なイベントを開催してきました。

職員 具体的にどのようなイベントを開催されてきたのでしょうか?

平井 地元で採れた野菜のフリーマーケット、名産でもある焼き鯖のグルメイベントやアクセサリー作りイベントなどを開催してきました。

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三日市ラボで開催されたイベントの様子

自分らしく暮らせる、
地域づくりを。

職員 わたしは、三日市ラボの利用者の一人です。みなさんと交流させていただく中で、人や地域とのつながりを広めようとされている活動に共感しています。フコク生命も人や地域とのつながりを広めたいという同じ想いを持っていますので、何かお力になれたら嬉しいです。例えばですが、わたしたちが全国の保育園や幼稚園にお届けしているおやさいクレヨン(※)を使って、子どもから大人まで楽しめるイベントを開催できないでしょうか。

平井 おやさいクレヨンのコンセプトは、わたしたちの活動の趣旨と非常に合っていると思います。雲南市は脱炭素宣言をしており、2050年までにCO₂排出量を0にすることを目標にしています。当財団も市と共に環境への取組みを行っており、その一環として市内のご家庭・交流センター・保育園などを回って生ごみを減らすための啓発活動を行っています。本来捨てられてしまう野菜の外葉などから作られたクレヨンを使って子どもたちに絵を描いてもらい、三日市ラボに展示することもできそうですし、色々な可能性がありそうですね。

職員 こちらこそ、よろしくお願いいたします。うんなんコミュニティ財団の取組みについてお聞かせください。

石原 主な事業に地域密着型クラウドファンディング事業があります。現在、クラウドファンディングを活用しながら空き家を改修し、様々なことにチャレンジしながら働ける場作りを、若い人たちが主導で行っており、そのプロジェクトの支援をしています。また、「地域まるごと子育て縁」という有事に頼りあえる共助のネットワークを築きながら保育・教育サービスを提供する事業や、「よりそい号」という鍋山地区内の高齢者の移動支援事業など、制度と制度の狭間にある課題解決の取組みの支援等もさせていただいています。
雲南に関わる方が、「自分らしく働ける」「チャレンジできて楽しい」「顔が見える関係で安心できる」「素直に暮らしやすい」、と思える地域をつくっていきたいと考え取り組んでいます。

※ 100周年プロジェクトの一環として、「THE MUTUAL Art for children」(ザ・ミューチュアル・アート・フォー・チルドレン)の取組みを実施しており、「おやさいクレヨン」を製作。当社が2012年度より開催している「すまいる・ぎゃらりー」の作品をデザインとして活用し、全国の保育園や幼稚園などにお届けしています。捨てられてしまう野菜の外葉などを原材料としており、食材ロスの削減として、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みの一つです。

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三日市ラボ1Fのコワーキングスペース

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三日市ラボ2Fのシェアオフィス

ゆるやかなつながりが、
暮らしやすい地域をつくる。

職員 では、最後の質問です。「THE MUTUAL」には、これからの時代、人が心豊かに暮らしていくためには人のつながりこそが大切であり、そのつながりをつくっていきたいという私たちの想いが込められています。高齢化率が全国平均の25年先を進む雲南市において、どのような人のつながりが必要だとお考えですか?

石原 今、雲南市では「地域おせっかい会議」というプロジェクトを行っており、当財団も連携させていただいています。地域おせっかい会議は、誰かのため・何かのためにおせっかいをやきたいと思う個人が立場を超えて集まり、「○○をしてみたい」という想いを持った方に、おせっかいの一歩が踏み出せるよう、対話・課題共有・協働による解決としての“おせっかい”を行う地域に根ざした会議体で、地域の中で“おせっかい”を広げていこうという取組みです。

今の時代、人を縛りつけるような関係性は、特に若い人にとっては窮屈と感じる人もいるのではないでしょうか。つながりは持ちつつも、一定の距離感を保つような緩やかなつながりが求められているのではないかと思います。近くで暮らす他人に興味を持ち、ちょっとしたことや有事には行動を起こせるような、ちいさな“おせっかい”の輪を広げ、お互いに持ちつ持たれつという関係性を築けたらいいのかなと思っています。また、その積み重ねや関係性から見えてくる気づきから次の一歩にチャレンジする方と、おせっかい会議や弊財団など「つなぐ役割」を持つ団体や人がつながっていることも重要だと思います。

職員 フコク生命とお客さまとの関係性にも通じるお話ですね。お客さまからは保険のことだけでなく身近なお悩みのご相談を受けたりもしますし、わたしたちがお客さまに身の上話を聞いてもらうこともあります。今、お話しいただいたような、ちいさな“おせっかい”からお客さまとの信頼関係が生まれているように感じます。同じような関係性が、地域においても生まれたら暮らしやすくなるのではないかと感じました。

平井 そうですね。三日市ラボのある木次町は昔ながらの“向こう三軒両隣”という関係が今も成立している町です。わたしは隣町で生活し子育てをしていますが、自治会内で子どもがいる世帯は我が家だけということもあり、地域の皆さんに子どもを可愛がってもらっています。雲南市には待機児童もいませんし、子育てにいい町だと思います。地方には都会とはまた違った良さがあると思います。正解は一つではありませんし、地方で生活する人たちにも選択できる自由が増えていくのはいいことだと思います。

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編集後記

松江支社

三日市ラボを利用するようになったのは、地方都市においてコワーキングスペースがどのような役割を担っているのだろうと興味を持ったからです。今回、運営スタッフの方たちとお話をするうちに、「地域を活性化したい、世代を超えた人たちのつながりを作りたい」という強い想いから誕生した場であることを知りました。そのような想いはフコク生命の活動に通じるものがありますので、三日市ラボのみなさんと一緒に活動できる機会を実現したいと思いました。うんなんコミュニティ財団の活動は、都会とは違う地方のよさを教えてくれ、地方で暮らす人々に様々な選択肢があることを示していると思います。ちいさな“おせっかい”を大切に、今の時代に合った人と人のつながりを構築し幅広い層が住みやすい環境を作ろうとされている取組みに共感しました。今回のインタビューを通じて、人と人のつながり、地域への想いを大切にし日々の活動をしていこうという気持ちが強くなりました。

※マスクを着用していない写真は、撮影時のみ外して撮影しています。

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