
フコク生命は、株式会社生保のトップセールスマンだった第二代社長の吉田義輝が、真にご契約者のことだけを考える相互会社を作りたいという想いで、当時鉄道王といわれた根津嘉一郎を何度も何度も説得して、1923年に創業した会社です。
初代社長に就任した根津の資本家としての「徹底的に利益にこだわる経営スタイル」と、吉田の「相互扶助にかける熱い想い」という二つの源流のもと、私たちは、必要であればリスクを取り、差別化戦略で収益力を高める一方、保険の公共性を常に意識し、相互会社としての使命を着実に果たすよう努めてきました。
「フコク生命がフコク生命であり続ける」ためには、役職員一人ひとりが、フコク生命が生命保険事業を始めた原点や、創業以来、脈々と受け継がれてきた想いを共有していなければなりません。根津の想いは「最大たらんよりは最優たれ」という社是として、吉田の想いは「お客さま基点」という価値観や、次代の相互扶助を考える「THE MUTUAL」というコンセプトとして、私たちの心にしっかり根付いています。
1990年代後半から2000年代前半にかけて、無理な規模の拡大を図り多額の損失を計上した同業他社が相次いで破綻する、「生保危機」と呼ばれる出来事がありました。そのなかでフコク生命が単独で生き残ったのは、社是である「最大たらんよりは最優たれ」に従い、いたずらに規模を追い求めるのではなく、質を重視する経営を実践してきたからです。これは私たちの経営のDNAとして、現在も一番の拠り所となっています。
その後のリーマンショックや東日本大震災、さらにはコロナ禍を経て、保険会社として、いかなることがあっても保険金等を確実にお支払するために健全性の強化に努めた結果、自己資本は2023年度に初めて1兆円を超え、2025年度には1兆2千億円台まで増加しました。
「最大たらんよりは最優たれ」を実践するうえでは、守るだけではなく、「攻めるべき時には攻める」という姿勢も重要です。高度成長期の積極的な株式への投資、業界の先端を行く商品の発売、総資産の1割程度に相当する投資額となった本社ビルの建設等、フコク生命の100年を超える歴史は差別化の歴史でもあります。
異次元緩和下においては、自己資本の充実に裏付けされたリスクテイクによって、資産運用力を強化する取組みを進めました。具体的には、利回りの低い超長期国債への投資を抑制し、内外の株式の残高を積み増す一方、米国が金融引き締めに入るタイミングで、極端な円高リスクは遠のいたと判断し、為替ヘッジを大幅に削減しました。このことは、その後の株高・円安と相まってフコク生命の資産運用収益を大きく押し上げました。また、異次元緩和解除後の金利上昇局面においては、一転して超長期国債を積極的に積み増し、高水準の利差益を安定的に確保する下地を整えました。
こうした一連の投資戦略は、差別化された資産運用を行う会社として高く評価され、保険金支払い能力を示す格付けは、2023年以降4社から格上げされ、特に米国の格付会社スタンダード・アンド・プアーズからは、「自己資本と収益力」において最上位の「極めて強い」との評価を受けています。
今、フコク生命は、「最優の生命保険相互会社」となるべく、資産運用と保険営業、両輪での成長を目指し、全社を挙げて様々な取組みを行っています。
デフレと異次元緩和が収束したことは、少なくともフコク生命にとってはポジティブな環境変化であり、規模ではなく質を追求していくことが、人口減少が加速する国内市場でも成長を続ける鍵となると考えています。そのために、「ご契約者」「地域・社会」「職員」という、相互会社としての主要なステークホルダーそれぞれに対して最優でありたいと考えています。
具体的に、ご契約者(お客さま)に対しては、充実した配当還元とフコク生命らしいコンサルティングセールスで圧倒的にコストパフォーマンスに優れた商品やサービスを提供すること。地域・社会に対しては、相互扶助の精神にあふれた取組みを積極的に推進し、企業として信頼されること。職員に対しては、業界トップクラスの処遇と働き方を提供すること。これが、私たちが描く「最優の生命保険相互会社」の姿です。
生命保険は生活に密接に関連する公共性の高い事業であり、保険業法はその第一条で保険業の公共性について触れています。公共性とは、どんなことがあってもご契約者を守ることであり、私たちが創業以来掲げている経営理念である「ご契約者の利益擁護」を実現するためには、株主が存在せず、ご契約者一人ひとりが構成員(社員)となる相互会社が最適だと考えています。株主がいない相互会社は、短期的な利益を追求することなく、一番のステークホルダーであるご契約者の利益を守ることに専念した経営を行い、利益の大部分をご契約者に配当として還元することができます。
一方、相互会社形態であるからこそ、コーポレートガバナンス体制の強化およびコンプライアンスの徹底は、経営上の最重要課題として位置付けています。特に最高意思決定機関である総代会は、ご契約者の代表である総代の皆さまから多くのご意見をいただけるよう工夫し運営しています。昨年の総代会にて、職員の処遇と同様に取締役の報酬も引き上げるべきといったご意見をいただいたことを踏まえ、より透明性を確保しつつ取締役の任命や報酬等の決定を行うために、本年4月より取締役会の諮問機関として指名・報酬委員会を設置しました。また、全国で開催するご契約者懇談会も、ご契約者との最も重要な対話の場と考え、いただいたご意見をできるだけ経営に反映するよう努めています。
相互会社であるフコク生命はお互いに助け合う人々をつなぐ役割を担っています。昨年10月、79年ぶりに刷新したコーポレートシンボルは、途切れることのない人のつながりをコンセプトとしました。一筆書きの「人」をモチーフとし、人と人の想いをつなぎ、その想いを守り続けるという決意が込められています。
100年を超える歴史を刻んできたフコク生命が、根底にある軸をぶらさず、この変化していく社会で「フコク生命らしさ」を貫くためには、あえて変わることも必要です。そういった問題意識から策定され、昨年度からスタートした中期経営計画「THE MUTUAL ACT 2027」は二年目に入りました。
「THE MUTUAL ACT 2027」では、フコク生命の経営ビジョンである「お客さま満足度No.1の生保会社となる」ことを目指し、「運用と保険、両輪での成長に向けた取組み」をトップダウンで、「お客さま」「地域・社会」「職員」との共感・つながり・支えあいの深化に向けた「ステークホルダー別の取組み」を、中堅・若手職員によるボトムアップで推進しています。
「運用と保険、両輪での成長に向けた取組み」では、相互会社の使命である配当還元の加速を図るため、強固な自己資本を裏付けとしたリスクテイクにより成長し、利益を上げることを目的として掲げています。
2025年度の基礎利益は、資産運用収益の好調により、ターゲットとしている標準責任準備金積立負担を除いたベースで1,306億円と3年連続で過去最高を更新しました。また、保有株式のリバランス等で含み益を実現したことにより、経常利益は同2.8倍の1,555億円と同じく過去最高となり、内部留保の積み増し等によって、自己資本は1兆2,057億円まで増加、自己資本比率は15.3%と業界最高水準を維持しています。その結果、2025年度決算より導入された経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)は、内部モデルベースで248.5%と引き続き高い健全性を維持しております。基礎利益、自己資本、ESRは中期経営計画の経営指標を2年前倒しで達成することができました。
配当還元について、2025年度決算では個人保険分野で14年連続の増配を実施し、増配額は127億円と過去最大となり、代表的な契約における10年間の累計配当金は保険料の1.5年分を上回りました。これにより、中期経営計画の経営指標である、保険料の2年分まで引き上げることの実現可能性が高まってきたと考えています。
生命保険ビジネスはストックビジネスであり、お約束している保険契約の保障総額である保有契約高が継続して増えていくことが、安定的に収益を確保する上で重要な要素となります。フコク生命の保有契約高は2003年度をピークに減少を続けており、これを本中計期間中に反転増加させたいと強く考えています。プロテクションギャップ(お客さまが本当に必要としている保障額と実際の加入額との差)への対応として、ご加入時の丁寧な説明とアフターサービスの徹底に取り組んだ結果、新契約高から解約・失効高を差し引いた営業純増額は大幅に増加し、いよいよ保有純増を狙えるところまできました。
「ステークホルダー別の取組み」については、中堅・若手職員を中心に議論を深め、お客さまの声を的確に把握しサービス等に活かす取組みを進めるとともに、「つながる未来プロジェクト」の発足や柔軟に働くための選択肢の拡充を実現しました。社外役員の前で堂々とプレゼンテーションを行う職員の姿は非常に頼もしく、中堅・若手職員への権限移譲や経営参画が前進しつつあるという確かな手応えを感じています。こうしたボトムアップによる施策の具体化に加え、ここ数年取り組んできた職員の処遇改善、あるいは社名認知度向上のための積極的な取組み等により、2025年度の職員意識調査は幅広い項目で改善しました。特に、「私は現在、フコク生命が変革していることを実感している」や「私は、フコク生命の将来について明るい見通しを持っている」といった項目が顕著に上昇しており、こうした職員のモチベーション向上が今後のフコク生命の成長につながることが期待されます。
生命保険は、お客さまとの一生涯にわたる、さらには世代を超える約束であり、終わりのない仕事です。お客さまとの約束を未来永劫守り続けるためには、お客さまを不安にさせたり、ご迷惑をおかけするようなことがあってはなりません。そのためにも、「もし自分がお客さまだったら」を常に想像しながら行動する「お客さま基点」を実践できる「人づくり」に取り組んでおります。昨年5月には、第二代社長、吉田義輝が職員に残した言葉を日めくり形式の小冊子にした「わたしたちの基本」を全職員に配付しました。この冊子には、「ご契約者本位」という創業の心を具体化した仕事に向き合う姿勢や行動の指針が示されています。
会社がお客さまや地域・社会から信頼される上で重要なのは、何のために私たちは生命保険事業に携わっているのかという理念教育の徹底です。「お客さま基点」のもと、こうした姿勢や指針を職員一人ひとりが日々の業務で体現するよう努めていきます。
成長機会を確実にとらえていくためには、これまで以上に「攻めの姿勢」と「スピード感」が重要であると考えています。
スピード感をもって施策を推進するための原資として、2025年度決算において「成長基盤強化積立金」を新設しました。AI等のデジタル技術の活用をさらに加速し、生産性向上によって生み出された余力を新たな価値創出へと振り向けていきます。併せて、職員一人ひとりが日頃からアンテナを高くし、変化を先取りして行動すること、そして、それが全体に広がり、着手することをためらわず、できるだけ短いサイクルで施策が実行されていくように、組織の変容を図っていきます。
私たちが目指す「最優」には、「最も優れた」だけでなく、「最も優しい」という意も込められています。フコク生命らしさを維持できる適正な規模を保ちながら健全性と収益力をさらに高め、お客さま、地域・社会、そして職員にこれまで以上に寄り添う会社となるよう努めていきます。
これからも、変わらぬご支援・ご愛顧を賜りますよう、心からお願い申し上げます。