ごあいさつ

「ご契約者本位」という創業時の想いが
経営理念「ご契約者の利益擁護」そして価値観「お客さま基点」へ

相互会社形態を創業以来貫く日本で唯一の生命保険会社として、
次代の相互扶助「THE MUTUAL」を追求した相互会社経営を実践する

代表取締役社長 米山好映

100周年を迎えるにあたり

 1923年に「ご契約者本位」という想いのもと相互会社として創業した当社は、おかげさまで2023年11月22日に100周年を迎えます。実質的な創業者である第二代社長の吉田義輝は、相互会社という会社形態にこだわりました。それは、ご契約者が保険団体を構成しお互いに助け合う相互扶助が保険の精神であり、保険会社は相互扶助の精神から生まれたご契約者を中心とする組織だからです。
 当社は創業以来、相互会社形態を堅持する日本で唯一の生命保険会社ですが、その根底には創業者の相互会社に対する真摯な想いが流れています。「ご契約者本位」という創業時の想いは、創業以来変わらぬ経営理念である「ご契約者の利益擁護」、そして価値観である「お客さま基点」に引き継がれています。

相互会社における保険事業

 相互会社における保険事業はご契約者の事業です。したがって、ご契約者は「社員」と呼ばれます。ご契約者は利用者(お客さま)であり、会社の構成員(社員)になります。社員とは仲間、つまり共同体の一員(メンバー)です。ですから、当社はご契約者に代わって事業運営をしているに過ぎないと言えます。吉田義輝が相互会社にこだわったのは、「ご契約者本位」を経営として徹底するためです。
 また、生命保険は国民生活に密接に関連する公共性の高い事業です。保険業法は第一条で保険業の公共性を規定していますが、公共性とはご契約者を守ることです。当社は「ご契約者の利益擁護」を経営理念に掲げていますが、この経営理念を実現するためには、株主が存在せず、ご契約者一人ひとりが構成員(社員)となる相互会社が最適であると考えています。生命保険は超長期にわたりお客さまの契約を保障していますが、相互会社は株主がいないため、長期的な視点で、共同体の一員(メンバー)であるご契約者の利益に専念した経営を遂行することができます。
 当社は、保険会社として「いかなることがあっても保険金等を確実にお支払いすること」が最も重要な責務であると考えるとともに、相互会社として「配当還元のさらなる充実を通じて、お客さまの実質的な保険料負担の軽減を図ること」が使命であると考え、これを実践しています。

生命保険の本質

 当社では、吉田義輝の想いや考え方をまとめた「創業の心」という小冊子を作成し、すべての役職員に配布しています。「創業の心」は研修などで活用していますが、私も折にふれ読み返します。100周年を迎えるにあたり、当社の原点にある創業の想いに立ち返り、その具現化に愚直に取り組んでいます。
 生命保険は金銭にとどまらず、命や精神に関わるものであり、他の金融商品とは異なります。だからこそ、「保険は、ご契約者やそのご家族に対して精神的、経済的な幸福と利益を与えるものである」という小冊子にある吉田の言葉は心に響きます。保険は万が一に備えることで幸福の礎である安心を提供します。そして、万が一の際は、悲しみのうえに経済的な悲しみをつくらないこと。それが生命保険だと思います。保険金や給付金等のお支払いにより経済的な利益をお届けするだけではなく、お客さまアドバイザーが親身に寄り添いお客さまの声に耳を傾けることで、おこがましいかもしれませんが、精神的な支えになることができるのではないか、そう考えています。
 生命保険は人間の機微に触れる仕事です。ですから、当社はFace to Face、つまり対面にこだわります。しかし、コロナ禍においては、対面を望まないというご要望にも柔軟にお応えするために、ITやデジタルを活用し、お客さまの立場にたった対応に努めました。他方、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により、人と人が触れ合う対面が持つ価値に改めて気づかされた面もあります。

ぶれない軸

 創業時の想い、経営理念、そして相互会社やFace to Faceに対するこだわり。こうしたぶれない軸が根底にあったからこそ、おかげさまで当社は100周年を迎えることができると考えています。当社は2018年から「THE MUTUAL」(ザ・ミューチュアル)というコンセプトのもと、100周年プロジェクトに取り組んでいます。MUTUALはあまり聞きなれないかもしれませんが、相互会社や相互扶助の「相互」を表す言葉です。「THE MUTUAL」とは、共感・つながり・支えあいをベースとした、次の100年に向け進化する次代の相互扶助のことです。当社に関わる人たちのつながりを深め支えあい、真の相互扶助を体現する組織を目指す決意を表しています。
「THE MUTUAL」を分かりやすく表現したものが、2023年1月に公表した新コーポレートメッセージ「人と人の間に」です。相互会社である当社は、お互いに助け合う人たちをつなぐ役割を担っています。わたしたちは人と人の間で、人と人の想いをつなぎ、その想いを守るために存在しています。人と人がつながるためには、共感が必要です。共感はリアルな対面からしか生まれません。共感からは信頼が生まれ、信頼からは安心が生まれます。したがって、当社は安心をFace to Faceでお届けしたいと考えています。
 お客さまにご安心していただくためには、会社の健全性が不可欠です。健全性とは、お客さまを守り続けるための会社の持続可能性です。つまり、いかなることがあってもお客さまにご迷惑をお掛けしないことです。ですから、当社は健全性にこだわります。それは、第四代社長の佐竹次郎が1951年に提唱した「最大たらんよりは最優たれ」という言葉に象徴されます。佐竹は堅実経営を主旨とした「最大たらんよりは最優たれ」を掲げ、規模を求めるよりも質を重視する経営を志向しました。これは生命保険業の本質であり、当社の経営の根幹に一貫して受け継がれているDNAです。こうした経営哲学を実践してきた結果が、健全性の高さにつながっていると思います。配当還元のさらなる充実を図るとともに、いかなる環境下においても健全性を維持できるよう、これからも自己資本の一層の強化に努めていきます。

お客さまとの約束を守る

 生命保険は、お客さまとの一生涯にわたる、さらには世代を超える約束であり、終わりのない仕事です。これまでの100年がそうであったように、次の100年も経営の健全性を維持し、大きな災害や経済危機があっても、確実にお客さまとの約束を果たせる会社であり続けたいと思っています。そのためには、軸は絶対にぶれてはいけません。もちろん、変化の激しい時代です。枝葉を変化させながら、いかに変化に対応していくかも重要です。

新型コロナウイルス感染症への対応

 営業活動については、コロナ禍においてお客さまに寄り添い、生命保険を提供し続けることを使命と捉え、デジタルツールを活用した新たな営業活動に取り組みました。具体的には、ビジネス版LINEであるLINEWORKSによるコミュニケーションをはじめ、保険設計書等の電子的送付やオンライン面談の活用を推進することで、お客さまの利便性向上に努めています。
 また、オンライン面談と郵送手続きの組合せにより、保険の提案から申込みに至るまで直接対面せずに手続きを行う取扱いについても、継続実施しました。お客さまのニーズを踏まえ、お客さま一人ひとりに寄り添いながら、より柔軟にお客さまのご要望にお応えできるよう、リアルとデジタルを効果的に組み合わせた新たな営業活動を推進していきます。
 お客さまサービスについては、新型コロナウイルス感染症に関する各種取扱いのご案内など、きめ細やかな情報提供により、お客さまの不安解消につながるよう努めました。具体的には、保険金・給付金ならびに契約者貸付等の手続きの簡略化を実施しました。
 保険金・給付金のお支払いについては、災害割増特約等が付加されたご契約に対し、新型コロナウイルス感染症を原因として死亡または高度障害状態に該当した場合、災害割増保険金、災害死亡給付金等の支払対象としてお取扱いしたほか、「みなし入院」の場合でも入院給付金等をお支払いするなどの対応を実施しました。また、新型コロナウイルスの第6波以降の感染拡大を受けて給付金のご請求が大幅に増加したことから、お支払いに遅延が発生していましたが、支払部門の増員や支払システムの増強などの対応に努め、12月には遅延は解消いたしました。
 また、2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを、「5類感染症」へ変更する政府方針にもとづき、同日以降の「みなし入院」による入院給付金等の取扱いなどを終了いたしました。

2022年度決算について

 コロナ禍という厳しい環境下でしたが、フコク生命、フコクしんらい生命合算の新契約年換算保険料は、コロナ禍以前である2019年度の水準を上回りました。保険会社の売上高を表す保険料等収入は2社合算で前年度比20.3%増加の7,606億円となり、こちらもコロナ禍以前の水準を上回っています。資産運用においては、フコク生命単体の利息及び配当金等収入が前年度(※)を上回り、5年連続で過去最高を更新しました(※2022年度における、利息の一部の計上方法変更の影響を除いた比較可能な調整値)。
 保険会社の収益力を表す基礎利益は、新型コロナウイルスの給付金のご請求が大幅に増加した結果、2社合算で前年度比34.8%減少の488億円となりましたが、健全性に揺るぎはありません。健全性を示す指標である連結ソルベンシー・マージン比率は1,171.9%と引き続き高い水準を維持しております。それを受け、ご契約者の期待にお応えするため、個人保険分野において契約者配当を増配いたしました。これにより個人保険分野の増配は、11年連続となります。
 生命保険は、相互扶助の精神で成り立っており、お預かりした保険料の一部は万一のことがあったお客さまに保険金等としてお支払いされています。2022年度においては、2社合算で5,826億円の保険金・年金・給付金をお支払いいたしました。

中期経営計画

 2022度からスタートした中期経営計画(2022年度~2024年度)においては、長期経営ビジョン「お客さま満足度No.1の生保会社となる」と現状とのギャップを埋めるべく、「事業変革を図るための基盤固め」と「多様化する社会課題を解決する取組み」を重点取組みテーマとしています。これらを推進することで、ES(職員満足度)の向上をCS(お客さま満足度)の向上につなげる「持続的成長のための好循環」の構築に努めています。
 具体的には、取組みテーマごとに組織横断で策定したアクションプランを推進しており、概ね予定どおり進捗しています。各支社ではお客さま満足度の向上を目指し、継続率や失効・解約等の改善、アフターサービスの向上に取り組んでいます。
 「『持続的成長のための好循環』の構築」を確認するための指標の一つとして「他者加入推奨意向」を設定しています。ご契約者アンケートにおいて、当社の満足度について「大変満足」と回答したほとんどのお客さまは、家族や友人などの他者に加入を推奨する意向があるという結果が出ています。2022年度の他者加入推奨意向は前年度から向上しましたが、より多くのお客さまに「大変満足」と思っていただけるよう努めていきます。

最後は人

 当社は、強固な財務基盤のもと健全性が高いため「石橋をたたいても渡らない」というイメージを持たれがちですが、果敢な挑戦の歴史を持つユニークな存在です。それは業界初の商品開発など差別化の歴史が物語っています。これからの100年に向けて更なる発展を目指すために、職員に求めていることは「ご契約者本位」や「相互会社」といった軸をぶらさずに日々の仕事に取り組むこと。そのうえで、変化に合わせて新たな価値や商品・サービスを生み出していくことです。私は人材開発本部の本部長を兼務していますが、人づくり基本方針として「自発」「独創」「利他」を掲げ、フコク生命ならではの人づくりを実践しています。
 人は脳だけの生き物ではありません。脳と身体が一体としてあってこそ人です。情報は脳だけで伝わりますが、真の感情は身体が伴っていないと伝わりません。ですから、リモートでは真の知(情報と感情の統合知)は伝わりません。そこには身体を通して発生する人と人の感情の同期が起こらないからです。人と人の同期とは共感のことです。リアルな対面においてこそ、お互いの身体を介して感情の同期が起きます。すなわち、お互いの中で共感が生まれます。このことは、リモートと対面それぞれの脳の血流量を計測することで科学的にも実証されています。
 リアルな対面の空間を「場」と言います。対面が欠かせない生命保険の仕事では、日頃から対面の空間である「場」づくりを心掛けていくことが大切です。職員と双方向で対話をする「場」として、車座ミーティングを2011年から実施しています(2023年3月末現在:318回実施し延べ2,339名が参加)。職場や年齢、性別など多様な職員と「場」を共有し、意見交換する中で共感が生まれる所に立ち会えるのは、何とも楽しい時間です。職員による自発的な提言を受け、2022年度からは役員(社外役員を含む)による車座ミーティングも始まりました。公募制で参加者は回を重ねるごとに増えています。また、参加者は社内SNSに感想を書き込むなどコミュニケーションも活発化しています。
 「場」が「場」として機能するためには、風通しのよい伸び伸びとした雰囲気が必要です。ですから、「個性を認め合う」「信頼して任せる」を人づくりの基本姿勢として定め、様々な能力を持つ職員が心おきなく活躍できるよう、サーバント型のリーダーシップを志向しています。サーバントとは執事という意味ですが、職員一人ひとりのありたい姿を支援しながら主体的な行動を促します。こうした土壌があって始めて新たな価値の創造が可能になると考えます。次の100年に向けて、これからも全社を挙げて場づくり、そして人づくりに取り組んでいきます。

代表取締役社長 米山好映

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